肝臓
B 型肝炎
B型肝炎ウイルス感染の経過は、感染時の年齢によって大きく異なります。免疫が正常な成人では多くの場合一時的な感染で済みますが、乳幼児の感染ではウイルスを排除できず感染が慢性的に持続します。成人では1~10%、乳幼児では10~15%が慢性肝炎へ移行します。
主な症状
感染してから数週~数か月の潜伏期を経て、まず全身倦怠感、食思不振、悪心、発熱などのインフルエンザ様の症状を認めます。続いて皮膚の痒み、黄疸(眼球や皮膚などが黄色くなる)が現れます。中には、肝炎が起こっているにも関わらず症状が出ないこともあります。
原因とリスク因子
血液感染(針刺し事故、輸血、針の使いまわし、入れ墨など)や性交渉、母子感染(分娩時の産道感染)が主な感染経路です。
診断
血液検査で血中ウイルスマーカー(HBs抗原、HBs抗体、IgM型HBc抗体、IgG型HBc抗体、HBe抗原、HBe抗体、HBV-DNAの7種類)を組み合わせ調べることで、ウイルスの活動状況を把握することができます。
治療
母子感染の予防治療として、HBs抗原陽性の母親からの出生児に対してHBIG(抗HBsヒト免疫グロブリン)投与とHBワクチン接種を行います。
急性肝炎を発症した場合、ほとんどが自然に排除されるためウイルスに対する治療は行わず、入院、安静、点滴などで経過をみます。
慢性肝炎へ移行した場合、対象者に対し、抗ウイルス療法としてインターフェロン治療や核酸アナログ治療を行います。
☆院長は肝臓専門医であるため、個々の状態に合わせよりよい治療を考えていきます。お気軽にご相談ください。
C 型肝炎
C型肝炎は、免疫系がウイルスを排除できず感染が持続し、約70%という高い確率で慢性肝炎へ移行します。しかし、現在は新薬の誕生によりウイルス排除が可能となってきており、治る病気として大きく進歩しております。
主な症状
B型肝炎と同様に、感染してから数週~数か月の潜伏期を経て、まず全身倦怠感、食思不振、悪心、発熱などのインフルエンザ様の症状を認めます。続いて皮膚の痒み、黄疸(眼球や皮膚などが黄色くなる)が現れます。
他のウイルス肝炎と比べ、症状は軽い場合が多いと言われています。
原因とリスク因子
血液感染(針刺し事故、輸血、針の使いまわし、入れ墨など)が主な感染経路です。
診断
血液検査で血中ウイルスマーカー(HCV抗体、HCV-RNA)を調べることで感染状況を把握することができます。
治療
C型肝炎のワクチンはまだありません。
現在抗ウイルス薬の進歩で、副作用が少なく、8~12週内服するだけで95%以上が完治することができるようになりました。ウイルス排除後も定期的なフォローが必要です。
☆院長は肝臓専門医であるため、個々の状態に合わせよりよい治療を考えていきます。お気軽にご相談ください。
アルコール性肝障害
『酒は百薬の長』と言われ、実際適度な飲酒は動脈硬化の抑制などに効果がありますが、度を過ぎると肝臓に負担がかかり深刻なダメージを引き起こします。
主な症状
基本的に症状はありません。連日の大量飲酒などで肝臓へ急激な負荷がかかり肝炎を発症すると発熱、悪心、黄疸(眼球や皮膚などが黄色くなる)などを認めます。
原因とリスク因子
アルコールが原因です。基準値は1日の平均純エタノール摂取量が60g以上であれば過剰飲酒とされます(日本酒3合/ビール大瓶3本/ウイスキーダブル3杯 相当)。
診断
明らかな原因がない脂肪肝や慢性的な肝機能異常があり、過剰飲酒が確認され、禁酒にて肝機能障害が改善するときに診断されます。
血液検査では、AST、ALTの上昇(AST優位)、γ-GTPの著明な上昇が特徴的です。
治療
禁酒が大原則となります。進行し肝線維症や肝硬変となっていても線維化や発がんの抑制効果があるため禁酒が重要となります。また、栄養素が偏りがちとなることが多く、ビタミンやミネラルを十分に含む食事をすることが必要です。
脂肪肝
肝臓内に脂質が蓄積した状態を脂肪肝と言います。脂肪肝の頻度は非常に高く、成人男性の1/3、女性の1/5の割合を認められています。
主な症状
症状や診察上の異常は認めません。血液検査や腹部超音波検査で発見されることがほとんどです。
原因とリスク因子
メタボリックシンドロームの一種と考えられています。過栄養状態(過食や運動不足)による肥満やインスリン抵抗性から糖尿病や脂質異常症などが重なり起こったことにより、血中の糖質や脂質が過剰となることで脂肪肝に至ります。他にアルコール多飲も原因となります。
診断
腹部超音波検査が最も有用です。他に腹部CT検査でも診断することができます。
血液検査ではコリンエステラーゼ、LDLコレステロールの増加、AST、ALT、中性脂肪の上昇を認めることが多いですが、正常範囲内ということもあります。
治療
減量したり、食事・運動療法による生活習慣の改善が必要です。糖尿病、脂質異常症、高血圧など合併していれば合わせて薬物治療が必要です。
☆脂肪肝が原因による肝硬変が増えております。ライフスタイルに合わせたよりよい治療を考えていきます。お気軽にご相談ください。
肝硬変
肝硬変は文字通り肝臓が硬くなる病態で、病理学的所見によって定義されます。肝組織が継続的に障害されると、慢性肝炎から最終的には肝硬変の状態に陥り、様々な合併症を引き起こすとともに肝細胞がんの原因となります。
主な症状
最初は無症状または全身倦怠感や食欲不振などの軽い症状を認めます(代償期)。さらに肝硬変が進行して代償が効かなくなると、黄疸(眼球や皮膚などが黄色くなる)や腹水、意識障害(肝性脳症)などの症状を認めます(非代償期)。
原因とリスク因子
主な原因は、C型肝炎、B型肝炎、アルコール、非アルコール性脂肪肝、原発性胆汁性肝硬変などです。原因がよくわからない場合、肝生検といって直接針を刺して肝臓の組織を取り調べる方法で行います。
診断
腹部超音波検査、腹部CT検査、MRI検査で肝臓の萎縮、肝表面の凹凸、合併症である腹水や脾腫などを確認します。最近は腹部超音波で体表から肝臓の硬さを調べること(エラストグラフィ)ができるようになり実用されています。
治療
原因疾患に対する治療と、肝臓を保護する治療(薬物治療や食事療法など)により進行を遅らせ合併症や肝細胞がんの予防に努めます。
肝硬変になってしまうと根治は難しいですが、場合により肝移植が適応となることもあります。
☆院長は肝臓専門医であるため、個々の状態に合わせよりよい治療を考えていきます。お気軽にご相談ください。
肝臓がん
肝臓がんは、肝臓にある細胞ががん化した原発性肝がんと、他の臓器のがん細胞が肝臓に流れ着いて増殖した転移性肝がんに分けられます。原発性肝がんの約95%は肝細胞がん(HCC)であり、リスクの高い方は定期的に検査が必要です。
主な症状
よほど進行しない限り、症状は認めません。進行すると、腹部圧迫感や疼痛、黄疸(眼球や皮膚などが黄色くなる)などを認めることがあります。
原因とリスク因子
主な原因は、C型肝炎、B型肝炎、アルコール、非アルコール性脂肪肝などです。
健常な肝臓にはまずみられず、長年に渡り肝組織が継続的に障害され発生するのが特徴です。典型的には慢性肝炎から肝硬変を経て発がんしますが、慢性肝炎からいきなり発がんすることもあります。
診断
血液検査、腹部超音波検査、腹部CT検査、MRI検査などで診断します。血液検査の腫瘍マーカーであるAFP、PIVKA-Ⅱが上昇した場合、肝細胞がんの発症が疑われます。
治療
がんの拡がり、肝障害度などから治療法を考えていきます。個々の状態に合わせ外科的手術、ラジオ波などの経皮的局所療法、肝動脈化学塞栓療法(TACE)、薬物治療(化学療法)、肝移植などを考えていきます。関連病院へご紹介します。