生活習慣病
高血圧
高血圧は、血液が動脈を流れる際に血管の内側にかかる圧力が高い状態を指します。日本人にとって身近な病気であり、脳卒中や心疾患などの合併症の危険を高めます。血圧は「収縮期血圧(最高血圧)」と「拡張期血圧(最低血圧)」の2つの値で表されます。
主な症状
一般的には自覚症状が少ないことが多いです。しかし、頭痛、めまい、息切れ、視覚障害、動悸のような症状や合併症が現れることがあります。
原因とリスク因子
高血圧は、一次性高血圧(本態性高血圧)と二次性高血圧に分けられます。一次性高血圧は明らかな異常がないにも関わらず血圧が高い状態で、主に生活習慣が原因です。
具体的な原因としては、以下の点が挙げられます。
塩分過多 肥満 飲酒 ストレス たばこ 運動不足 遺伝
診断
収縮期血圧が140 mmHg以上、拡張期血圧が90 mmHg以上の場合、高血圧と診断されます
治療
- 食事療法:適切な食事を摂ることが重要です。塩分の摂り過ぎやカロリーの過剰摂取に注意し、バランスの取れた食事を心掛けましょう。
- 運動療法:有酸素運動(ジョギング、速歩、水泳など)を週3回以上、1日合計30分以上行うことで肥満を改善し、血圧を下げる効果があります。
- 薬物療法:内服薬を使用して血管を広げたり、血圧を抑えたりします。薬物療法は食事療法や運動療法と併用して行います。
以下に主な種類を紹介します。
- カルシウム拮抗薬
- アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬 (ARB)
- アンジオテンシン変換酵素阻害薬 (ACEI) 利尿薬
- アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬 (ARNI)
- ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬
- β遮断薬
- α遮断薬 など
脂質異常症(高脂血症)
脂質異常症(高脂血症)は、血液中のコレステロールや中性脂肪などの脂質が増加する状態を指します。
主な症状
自覚症状はありません。
原因とリスク因子
動脈硬化のリスクを高めます。主な原因は以下の点が挙げられます。
- 食事中の飽和脂肪酸、コレステロールの摂り過ぎ: 肉の脂身、バター、ラード、加工食品、鶏卵の黄身や魚卵などに多く含まれます。
- エネルギー量の過剰摂取: 甘いものや酒、油もの、糖質の過剰摂取が中性脂肪を増加させます。
診断
血液検査で以下に当てはまるものを言います。
- 悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が多い(LDLコレステロール値≧140 mg/dL)
- 善玉コレステロール(HDLコレステロール)が少ない(HDLコレステロール値<40 mg/dL)
- トリグリセリド(中性脂肪)が多い(中性脂肪≧150 mg/dL)
治療
- 食事療法:摂取カロリーを適切な範囲に抑えることが大切です。油で揚げた食品や動物性脂肪を控え、植物性脂肪を積極的に摂りましょう。食物繊維も意識的に摂取し、コレステロールの吸収を防ぎます。
- 運動療法:有酸素運動(ウォーキングや水泳など)を少なくとも1日あたり30分以上行いましょう。過度な負荷は避け、無理なく体を動かすことが大切です。
- 薬物療法:スタチン系薬が一般的に使用されます。LDLコレステロールを下げる効果があります。
以下に主な種類を紹介します。
- スタチン系薬
- フィブラート
- ニコチン酸
- EPA/DHA含有薬 など
高尿酸血症
高尿酸血症は、血液中の尿酸値が高い状態を指します。尿酸はプリン体が分解されてできた老廃物で、通常は腎臓や腸から排出されて体内で一定の量を保っています。しかし、尿酸が過剰に作られたり排出がうまくいかなくなったりすると、血液中の尿酸濃度が増加して高尿酸血症となります。
主な症状
高尿酸血症自体は無症状のことが多いですが、以下の合併症を引き起こすことがあります。
- 痛風発作:尿酸結晶が関節に堆積することで、急激な痛み、腫れ、赤みが生じます。通常、足の親指の付け根が影響を受けます。
- 尿路結石:尿酸結晶が尿路に堆積することで、腰や腹部の痛み、血尿、排尿困難が起こることがあります。
- 慢性腎臓病:長期間にわたって高尿酸血症が続くと、腎臓にダメージを与える可能性があります。
原因とリスク因子
- 遺伝的要因
- 肥満
- 食事:プリン体を多く含む食品(レバー、干物、ビールなど)を摂取することで尿酸値が上昇することがあります。
- 腎臓機能の低下:腎臓が尿酸をうまく排泄できない場合、尿酸値が上昇します。
- 薬物:一部の薬物(例:利尿薬、アスピリン)は高尿酸血症を引き起こす可能性があります。
診断
血液検査で血清尿酸値が7.0㎎/dL以上である場合を言います。
治療
- 食事療法:適切な食事を行うことで高尿酸血症の改善を目指します。プリン体を多く含む食品を控え、アルコールの飲みすぎに注意しましょう。
- 運動療法:有酸素運動を中心に行います。特に肥満の人で効果的です。
- 薬物療法:尿酸排泄促進薬や尿酸生成抑制薬を使用して血液中の尿酸を改善させます。
以下に主な種類を紹介します。
- 尿酸排泄促進薬:ユリス ベンズブロマロン プロベネシド など
- 尿酸生成抑制薬:フェブキソスタット トピロキソスタット など
- 痛風発作治療薬:コルヒチン NSAIDS ステロイド など
糖尿病
糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が増えてしまう病気で、主に2つのタイプに分けられます。
- 1型糖尿病:膵臓からインスリンがほとんど出なくなる状態です。インスリンは血糖を細胞に取り込む役割を果たしています。1型糖尿病患者は、生きていくためにインスリン注射が必要です。
- 2型糖尿病:インスリンが出にくくなったり、効きにくくなったりすることによって血糖値が高くなります。遺伝的な影響や生活習慣が原因とされています。食事や運動習慣の見直しが重要で、場合によっては飲み薬や注射も利用されます。
妊娠中に初めてわかった血糖の上昇を「妊娠糖尿病」といい、注意が必要です。
主な症状
糖尿病の初期症状は、自覚症状がほとんどないことが特徴ですが、進行すると以下のような症状が現れることがあります。
疲れやすい 口渇感 多尿 体重減少 手足のしびれ
原因とリスク因子
- 生活習慣:食べすぎ、飲みすぎ、運動不足、喫煙、ストレスなどの悪しき生活習慣が最大の危険因子です。
- 肥満:肥満はインスリンの働きを悪化させ、血糖値を上昇させるリスクがあります。
- 遺伝的要因:家族に2型糖尿病の人がいる場合、遺伝的なリスクが高まります。
- その他の原因:妊娠糖尿病、ステロイド薬の副作用、内分泌系の異常、膵炎や膵がん、遺伝子の異常などが関連しています。
診断
- 早朝空腹時血糖値:126㎎/dL以上
- 随時血糖値:200㎎/dL以上
- 75gOGTT2時間値:200㎎/dL以上
- HbA1c:6.5%以上
上記4つのうち、①~③いずれかと④が確認された場合 もしくは、①~④いずれかが2回確認された場合 を糖尿病と診断します。
治療
糖尿病の治療は、主に以下の3つの柱から成り立っています。
- 食事療法:食事によって血糖値をコントロールします。炭水化物の摂取量やエネルギーのバランスを調整しましょう。
- 運動療法:運動によって糖が使われ、血糖値を下げる効果があります。適切な運動を継続的に行いましょう。
- 薬物療法:飲み薬や注射薬を使用して血糖値を管理します。糖尿病の種類や状態に応じて選択されます。
以下に主な種類を紹介します。
- インスリン注射
- ビグアナイド系
- スルホニルウレア剤
- DPP-4阻害剤
- SGLT2阻害剤
- GLP-1受容体作動薬 など
睡眠時無呼吸症候群
上気道の閉塞などにより、睡眠中に10秒以上の呼吸停止が、1時間あたり5回以上または7時間の睡眠中に30回以上ある状態を睡眠時無呼吸症候群(SAS)と言います。居眠り運転による事故は、SASがない方と比較して7倍とも言われています。
主な症状
多くの方にいびきを認めます。いびきをかいている時は睡眠が浅く、体の疲れがとれるような深い睡眠が得られていません。そのため、熟睡感がない、起床時頭痛がある、昼間に眠気が強い、集中力が低下するなどの症状を認めます。
症状が重くなると、不整脈、心不全、高血圧、糖尿病などが合併しやすくなり、突然死や心筋梗塞、脳梗塞のリスクが高くなります。
原因とリスク因子
上気道閉塞の原因として、首周りの脂肪、舌が大きい、扁桃腫大、顎が小さいなどが考えられます。肥満体型の方などがリスクとなります。
診断
睡眠中の無呼吸の有無や重症度、睡眠の深さなどを調べる検査(終夜睡眠ポリグラフィ検査:PSG)を行います。自宅でできる簡易型と、脳波などを同時に調べる精密とがあり、当院ではまず簡易型PSGを受けていただき、検査結果をみて精密検査が必要と判断した場合は関連病院へご紹介します。
治療
検査結果に基づき、最も適した治療を行います。
- CPAP療法:鼻にマスクをつけて上気道に空気を送り込み、塞がらないようにする方法です。
- 歯科装具:マウスピースをつけて、下顎を前方に出して上気道が塞がらないようにします。
- 外科的手術:肥大した扁桃や軟口蓋を手術で切除します。
- 肥満の方は痩せるだけで無呼吸が軽くなります。また横向きに寝ることも有効です。
花粉症
舌下免疫療法について
舌下免疫療法とは、舌の下にスギ花粉やダニの成分を少しずつ体内へ入れることで、アレルギー反応を緩和しながら治していく治療法です。従来は、アレルギー物質を含む治療薬を皮下に注射する「皮下免疫療法」が主流でしたが、舌下免疫療法が登場し、自宅で服用、治療ができるようになりました。
現在スギ花粉による花粉症(シダキュア錠)と、ダニによるアレルギー性鼻炎(ミティキュア錠)に対する治療が保険適応となっております。ともに5歳以上の方が対象となります。
治療法・治療期間
1日1回、舌の下に薬を1分間含んだ後飲み込みます。その後5分間うがい、飲食は控えてください。
期間は3~5年間行うのが基本です。およそ8割の方で治療効果を認めております。
治療開始時期
スギ花粉
→新規で治療開始できるのは、6月~12月です。スギ花粉が飛散する1月~5月末までは副作用の懸念から治療開始できません。
ダニアレルギー
→1年中いつでも始められます。
副作用
副作用として、唇や口の中の腫れ、かゆみ、のどの違和感、耳のかゆみなどを認めることがあります。重大なものとして非常にまれですが、呼吸困難、蕁麻疹、腹痛・下痢、血圧低下などのアナフィラキシーショックが引き起こされる恐れがありますので、初回の内服は医師の監視下でしていただきます。
治療の流れ
- 治療をご希望される方は、舌下免疫療法についての説明と、スギ花粉、ダニに対する事前検査として血液検査をしていただきます。
- 血液検査結果で適応と判断された場合は治療へうつります。最初の内服は、クリニックで医師および看護師の指導の元、ご自身で行っていただきます。内服後30分間、副作用が出てこないかクリニック内で様子をみさせていただきます。問題なければ帰宅となります。
- 経過観察とお薬の処方のため、約1か月に1回通院していただきます。
治療できない方
- 重症の気管支喘息がある
- 悪性腫瘍、自己免疫疾患がある
- 65歳以上の高齢者
- 妊婦、授乳中
- ステロイド・抗がん剤を使用している
- B遮断薬を使用している
上記に当てはまる方は治療できません。
☆舌下免疫療法の治療はどの施設でも受けられるわけではありません。当院は治療可能な医療機関なので、お気軽にご相談ください。